皮膚、人間のすべてを語る
モンティ・ライマン 著
塩﨑香織 訳
みすず書房
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以前も一度ご紹介させていただいた書籍なのですが、著者の見解には食生活・睡眠・日光と皮膚の関係など、私たちの暮らしや生活習慣を見つめ直すきっかけやヒントが散りばめられていると感じ、改めてご紹介をさせていただきます。
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皮膚については、毎日目にしていながらあまり意識することがないという方が多いのではないでしょうか。
皮膚は、人体の中で最大の面積と重量を有する臓器にもかかわらず、18世紀に入るまでのあいだ”包み紙”とみなされてきた歴史があります。しかし最近の研究の結果により、私たちの想像以上に身体とこころ、そして脳や腸などとも深い関係にあるようです。
著者の専門である科学・医学に加えて社会・心理・歴史などの領域を横断し、皮膚の世界を大きな旅として巡ります。
厚さのある本ですが、医学書のような難解な内容ではないこともおすすめのひとつです。
「皮膚のプリズム」
「皮膚は世界と私たち自身を見通すレンズ」
など、読み進めていくと、詩的な言葉にあふれています。
過去にあまり注目されてこなかった”皮膚”という存在を観察・考察・研究し続けた著者だからこその表現は愛にあふれ、物語のように美しく情景が目に浮かんできます。
サブタイトルに「万能の臓器と巡る10章」とあるように、広大な皮膚という大陸を旅しているような感覚になることと思います。