カレンダー


今年アトリエで飾っている2023年のカレンダーは、「髪を切るということ04」にご出演のグラフィックデザイナー長嶋りかこさん率いるvillage®デザインのものです。

かすれたインクと凹凸のあるぼこぼこした厚紙。どこかで見覚えのある質感…
Futures In-Sight展でみた長嶋さんの作品ときっと同じものだと思い、先日ご本人にお会いしたときに尋ねたところ、やはりそうでした。

21_21 DESIGN SIGHTギャラリーで2021年に開催されたFutures In-Sight展。
https://www.2121designsight.jp/program/2121/index.

 

開催年から100年後の2121年の世界に想いを巡らせた展示で、国内外で活躍する様々なデザイナー、思想家、研究者などが参加し、Future Compass(未来の羅針盤)を使ってそれぞれ独自の問いを立て、それに対してのinsight(視座・洞察)を展開する内容でした。
長嶋りかこさんも参加者の1人でした。

「いつから2121年は始まるのか?」
の問いに対して展示されていたものは、長嶋さんの未来に対しての想いが微かに読み取れるほどで印刷された、凹凸のある厚紙の束でした。

この厚紙は長嶋さんのデザインのお仕事ででた”ヤレ紙”を引き取って粉砕し再生したものでした。ヤレ紙とはオフセット印刷の工程において、位置調整や色調整などを行うために印刷機に通す損紙のことです。
機械乾燥ではなく天日乾燥にし、その際に起こるゆがみを生かしているため紙に凹凸があり、そこにはひとの手のぬくもりがあります。

毎日何度も目にするカレンダー。
過去に出た廃棄物が、未来を示すものに生まれ変わっていること。
長嶋さんの未来へのやわらかなまなざしを感じました。

文:大久浩実(表参道アトリエ)

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