東京都庭園美術館で開催中の「ルネ・ラリック リミックス」展を鑑賞してきました。
東京に数ある美術館の中でも、この美術館はなんと言っても建物が美しく、
アール・デコとよばれる装飾様式で統一され、目に入る空間はどこを切り取っても美しく、息を飲むほどです。
そして庭園美術館は私にとっても特別な場所。
私ごとですが、社会人になって初めて勤めた会社は、
西洋文化の影響を受けたジュエリーを扱う会社でした。
毎シーズンヨーロッパから届く商品は、身に付けられる芸術作品のようで
作品の意図や歴史など、自ら勉強しないとお客様に提案できないため
アール・ヌーヴォーやアール・デコを肌で感じたくて庭園美術館に時々訪れていました。
今回の「ルネ・ラリック リミックス」展も、
18年前に観た「ヨーロッパジュエリーの400年」展の記憶と重なりました。
ラリックの作品の素晴らしさもさることながら、今回は、今までに
体験したことのない展示方法に私は一瞬で魅了されてしまったので、
その部分に着目した感想を少し書かせていただこうと思います。
旧館の展示は時代背景がそのまま感じられるようで、
1900年頃にタイムスリップしたような気持ちで鑑賞できました。
旧館からの余韻を残しながら、新館の展示に足を一歩踏み入れると、
まず目に入るのが床に落ちる美しいシルエットです。
影という存在は、細部は明瞭ではないけれどAというものの「輪郭」であり、表立って見えないモノの存在を「暗示させるもの」です。
新館での展示方法や演出はあまりにも私にとって衝撃で、言葉を失いました。
建築家の中山英之さんが担当されています。
どこかの邸宅を思わせる外装部。
窓辺に置かれているラリックの作品達。
長く伸びる影と共に、裏側からまず鑑賞してもらうというアプローチは、
恋愛小説のプロローグでもあるようで、何かの物語を予感をさせます。
斬新で、でも軽やか、そして魅惑的な演出方法に私は一瞬で引きこまれました。
アーチが印象的なエントランスからお屋敷(展示スペース)の中に入ると、
さらにキャプションやタイポグラフィーにも目が奪われます。
裏側からまず先に見たことで、一度自分の頭で想像をしたラリックの作品たち。
表側にまわってもう一度作品と対面するという、一つのものを多角的に見る手法。
一周ぐるりと見ることのできる展示方法よりも、何倍も奥深く味わい深いものでした。
中山英之さんがインタビューで解説されている記事を読ませて頂きましたが、
「同じものを時間を置いて二回見る」という経験を是非楽しんでほしい、
と書かれていました。
”Searching for inspiration in the times ”
この展示のサブタイトルに込められた想いに、心を寄せることで
より多くのことを得られるような気がします。
ルネ・ラリック リミックス
時代のインスピレーションをもとめて
会期:2021年6月26日~9月5日
会場:東京都庭園美術館
https://www.teien-art-museum.ne.jp
staff 大久